MINOTAUR INST. × THINK AND SENSE  『宇宙から見た東京』を表現したTシャツができるまで

 松山周平/ Shuhei Matsuyama
1991年生。ビジュアルアーティスト&プログラマー。株式会社ティーアンドエスではTHINK AND SENSEの部長を務める。先端技術を生かした展示やアート、インタラクティブなパフォーマンスを得意としており、マイクロソフトのMRデバイス『HoloLens』を活用した『Pokémon GO AR展望台』『AR Roppongi x Ingress』などに携わる。クリエイティブレーベルnor所属。著書に『Visual Thinking with TouchDesigner』がある。

第1弾インタビュー『MINOTAUR INST. × THINK AND SENSE「最終ゴールはムーブメントを作ること」』>

第2弾インタビュー『MINOTAUR INST. × THINK AND SENSE『街の音』を色と模様へ変換したグラフィックTシャツができるまで』>

『マッシブな視点としての人工衛星の知覚』

──第3弾は写真を使ったデザインになっています。今回のテーマはなんでしょう?

今回は『マクロな視点から見た都市』です。今まではミクロな視点で都市を見ていたので、もっと大きな視点から都市を見てみようとなりました。©JAXAと入っているように、JAXAの人工衛星の画像を使っています。日本の衛星だいちが撮影したAVNIR-2のオルソ補正画像プロダクトになります。

 

画像=©JAXA

──Tシャツの画像を見ると黄色が多く感じますが、高い建物や山が黄色くなっているのですか?

一般的にはそう考えますよね。実際には、衛生写真はカラーカメラで撮るのではなく、周波数を分けた複数の赤外線カメラで撮っています。赤外線の反射率が地上の物体によって異なるので、各周波数帯の赤外線画像の情報を組み合わせ、解析することで標高や土地活用の状況などが分かるようになっています。

でも、このTシャツではあえてそれをせずに、人間の目で見える可視光域に置き換える変換を行っています。また色情報を置き換える際に単純な置き換えではなく、ピクセルの光度に基づきピクセルソートというアルゴリズムを利用して1ピクセルづつ走査し、画像内の輝度がより高い場所が強調されます。本来、人工衛星が見ているのは白黒だけど『人工衛星も一つの視点』と考えて、『人工衛星に可視光を認識する知覚があるとしたら』というのを表現したのが今回のTシャツです。

──それをTシャツのデザインにする発想がすごいですね。

今までは自分たちで録ってきた音やSNSに投稿された写真を使いましたが、結局は『間接的に都市に接した情報』なんです。

satellite observation(衛星観測)と言いますが、言ってしまえば超巨大な目のようなものだと思っています。第1弾は現地の渋谷ではなくインターネットを介して見た渋谷をジェネレーティブアートというフィルターを通して、オルタナティブな視点として可視化しました。今回は人工衛星というマッシブな視点から見た都市のオルタナティブな視点を可視化しています。

 ──人工衛星の画像が斜めにデザインされていますが、これは松山さんたちの提案ですか?

そうですね。どこに何を配置するといった全体的なデザインはMINOTAUR INST.と共同で決めますが、この画像を斜めにするというのは僕が提案しました。そもそも衛星画像は、慣習的にこのような角度がついた状態で表現されることが多いです。

詳しく説明するとややこしいのですが、地球が丸いかつ自転をしているのでこのような角度で表現することが正しいです。今回活用した衛星画像もこのように表現されていたので、そのまま活用しました。これは第2段の記事でもあったように、ファッションとしての商業デザインのバランスとして取り入れています。今回はある意味あるがままで活用していますが、この角度が付いた画像は衛星画像であるということを示唆しています。また、左下に入ってる文字列は、各衛星画像に付けられている識別コードです。これもまた、デザインとしてのバランスとしてグラフィックに入れました。