J Eyewear Lab × MINOTAUR INST. 「仕掛けていかないと今の時代からは進んでいかない」

 中屋光晴-Mitsuharu Nakaya-
株式会社JINS JEL事業グループ ディレクター
アパレルベンチャー企業にて複数のブランド創業に携わり、2014年株式会社ジェイアイエヌに入社。商品企画MD、マーケティングマネージャーを歴任して現職に至る

「購入プロセスをテンションが上がるものにしていく」

──前回のインタビューで挙がったバーチャル空間について聞かせてください。今はECとバーチャルがあまり上手くマージしていないと感じていますが、これがマージしていく未来はそう遠くないと思っています。

まさにその通りで近い将来、体感という部分もデジタルになるかもしれないですが、役割が違ってくると思います。現時点で言うと、世界観を拡張している存在がデジタル空間上では担いやすくて、より身体で感じる部分は店舗に行かないと体感できない。

基本的にはデジタルサービスがいろいろと便利になってきています。ただ、店舗でできる購買体験のようなものを一色にするだけだとDXになってしまいますが、そこにもっと豊かなものや購入プロセスをテンションが上がるものに僕たちはしていきたいです。

──今年はコロナの影響もあって皆さんこういう世界に力を入れ始めていて、バーチャルには抱える壁を乗り越えさせる力が十分にあると感じさせる年だったと思います。

まさにそうですね。僕たちはそこを主戦場にしたいという思いもあるので、まずは僕らがやらない理由はないなと。製品が良くても、それを購入するプロセス上でブランドを体感できないと、J Eyewear Labを感じていただけないと思います。場を持つことは非常に重要ですが、その場をハブにしてデジタルに接続していくことが重要だと感じています。

「カルチャーとは、あとから振り返って名前が付くものなのかな」

──テクノロジーを手法としてとらえるのではなく、一つのカルチャーとしてとらえる。それがリアルな場所やファッションとミックスした時に、どういうものが生まれるのか。多くの人と形を作っていくことを含めて、活動そのものが最終的なプロダクトになるのかなと感じます。

まさにその通りで、その活動の一環がこのお店だと思います。実際に、泉(栄一)さんとはそういう話をしたり、同じビジョンを共有しながらいろいろ取り組んでいて、このお店もその中の一つです。カルチャーはどっちかと言うと、やっている途中でどうこうというよりは、あとから振り返って名前が付くものなのかなと。きっと、やっている本人は「これは何々カルチャーだ」と意識していないと思うんです。それはアーカイブ残していくことで、後々「あれはこういうことだったんだな」みたいになるのが僕の理想ですね。

これから始めることに対して名前を付けるのは、すごく難しいと僕は思うんです。何かしらのいろいろな点が線になっていく。そのためには何かを仕掛けていかないと今の時代からは進んでいかないと思います。『ファッションは時代を繰り返す』と言われがちですが、一歩進化しなければいけないフェーズに差し掛かっていると思っていて、示し合わせたわけではないですが、同じように感じて発信されている方が最近増えてきていると思います。何かを仕掛けていくためには、こういうアウトプットがたくさん必要だなと感じていますね。

──中屋さんのお話を聞くと、お店に頻繁に遊びに行きたくなります。

ぜひ来てください! 今まではファッションビルに入っていたこともあって、どうしても商売をする場になってしまうんですよ。でも、この店舗は路面店である利点を生かして、商売の目的だけじゃなくて人を繋ぐ場にしたいなと思っています。自由度が高いのでいろいろなことができますし、例えば今までのお店とは違う使い方をしたり。今までは何かをしようとしても障壁がありましたが、そういうのも路面店だとなくなるのかなと。ここが皆さんと繋がれる場になることが僕の理想です。

インタビュー=松山周平